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「DX認定」完全ガイド:制度概要からメリット・申請方法まで徹底解説し、“DX-Ready”企業への第一歩を踏み出そう

現在、日本政府や経済産業省は、企業がデジタル技術を活用して新たな価値を生み出す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の重要性を強く訴えています。その推進を後押しする仕組みの一つが「DX認定制度」です。近年、企業競争力を高めるうえでDXは避けては通れないキーワードとなっており、DX認定を取得して対外的に“DX-Ready”レベルな企業であることを示すメリットは大きいとされています。しかし、実際に「DX認定とは何か?」「取得するにはどうすればいいのか?」といった疑問を持つ経営者の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、DX認定の概要から取得のメリット、そして具体的な申請・準備方法までをわかりやすく解説します。最後には、総務の業務効率化を可能にする「atena」というツールもご紹介しますので、ぜひあわせてお読みください。

DX認定とは

DX認定の概要

DX認定は、「情報処理の促進に関する法律」(通称:情促法)にもとづき、経済産業省が認定する制度です。正式名称は「DX認定制度」ですが、企業が自社のビジネスモデルや内部の業務プロセスをデジタル化し、変革を推進するための取り組み姿勢や体制を整えているかを客観的に示す認定枠組みといえます。

  • “DX-Ready”レベルの評価
    DX認定制度では、企業が「デジタルトランスフォーメーションに取り組む体制を整備し、戦略的に推進している」ということが一定の基準(ガイドライン)に則って評価されます。認定を取得することで「わが社はDX推進の準備ができている(DX-Ready)」と公に示すことが可能となり、ステークホルダーへの信頼感向上や社会的な評価につながります。
△経済産業省「DX認定制度概要」より

このDX認定制度に関する公式情報は、以下の経済産業省のページで確認できます。具体的な申請書類の書き方やガイドラインも公開されていますので、ぜひ参照してみてください。

デジタルガバナンス・コードとの関連性

DX認定を受けるには、企業統治(コーポレートガバナンス)を整備することが不可欠です。具体的には、経済産業省が示しているデジタルガバナンス・コードの基本的事項に準拠していることが認定条件の一つとなり、DX認定の申請書にはデジタルガバナンス・コードの各項目に対応する内容を記入することになります。

デジタルガバナンス・コードでは、以下の3つの視点と5つの柱が重要視されます。

△経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」より

認定を受けることのメリット

企業イメージの向上

DX認定を受けることで、「この企業はデジタル技術を積極的に活用して事業や業務の変革を図っている」と対外的に示すことができます。これにより、顧客・取引先からの信頼度が増すほか、採用活動においても「DXを推進する先進的な企業」としてアピール可能です。

△経済産業省「DX認定事業者アンケート結果」より
  • 取引先へのPR効果
    「DX-Ready」な姿勢を公式に認定された企業であることから、取引先に対しても変革意欲の高い企業イメージを訴求できます。

  • 採用面でのアドバンテージ
    DX人材は市場で大きく不足しているとされ、優秀な人材を確保する競争は激化しています。DX認定を取得すれば、自社の先進性を示して人材の確保に有利になります。

税制による支援措置が受けられる

DX認定を受けている企業は、「DX投資促進税制」などの税制優遇が受けられる可能性があります。具体的には、DX推進のための設備投資やシステム導入に対して、3%または5%の税額控除(一部ケースでは特別償却)などが認められることがあります。

  • 投資リスク低減
    DX関連投資は多額になるケースが少なくありません。税制優遇措置により投資リスクを緩和できる点は経営者にとって非常に大きなメリットです。

  • 優遇措置の詳細
    税制優遇の適用には、投資内容が「DX推進のための設備投資やシステム構築」であること、そして経済産業省が示す要件を満たすことが必要になります。詳しくは経済産業省:DX認定制度や税理士・公認会計士等の専門家にご相談ください。

中小企業は特別金利で融資が受けられる

中小企業がDX認定を取得した場合、中小企業等経営強化法に基づき認定を受けた情報処理支援機関として、日本政策金融公庫より、金利優遇を受けることができます。

  • 具体的な利率例
    利率は基準利率(1.75%)より低い特別利率②(1.10%)で、必要な設備資金(ソフトウェアを含む)および長期運転資金に利用できる資金の融資が受けられます。※2025年2月時点

デジタル人材の育成費についての助成が受けられる

DX認定企業には、デジタルスキルを持つ人材の育成費用を助成する制度も用意されています。たとえばDX認定を受けることで、厚生労働省が定める高度デジタル人材訓練の対象事業主の要件を満たすことができるため、業務に必要なITスキルの取得にかかる訓練経費(最大75%)や訓練中の賃金の一部(最大960円/時間)について助成を受けることができます。

  • 人材育成コストを抑制
    DXにおいて最も重要なのは「人」です。デジタル人材を社内で育成するコストを国や自治体の支援で軽減できると、より積極的にDXに投資できます。

  • 対外的なPR効果
    社内人材の育成に力を入れている点は、取引先や求職者に対してプラスのイメージをもたらします。助成制度を活用して社内研修や外部講習への参加を充実させることも、企業力強化に直結します。

DX銘柄、DXセレクションへの応募権利を得られる

経済産業省や東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄」や、IPO(新規株式公開)を目指す企業向けの「DXセレクション」などに応募するためには、DX認定を受けていることが前提条件となる場合があります。

  • 投資家へのアピール
    DX銘柄に選定されることで、国内外の投資家からの注目が高まり、資金調達力の向上や株価の上昇などが期待されます。

  • ブランド力の強化
    「DX銘柄」や「DXセレクション」に入ることで得られる社会的評価は非常に大きく、企業ブランド力を強固にするうえでも有効です。

申請方法

手順

DX認定の申請手順は大きく以下のステップに分けられます。

  1. gBizIDプライムの取得

    • 申請は原則として電子申請で行われるため、まずはgBizIDプライムを取得する必要があります。
    • gBizIDプライムは法人代表者等が申請し、書面による本人確認後、アカウントが発行されます。
  2. 申請要件の確認

    • DX認定要件を満たしているか、経済産業省やIPAが公開しているガイドラインを参照して事前に確認しましょう。
    • 特にデジタルガバナンス・コードに関する要件を満たしているかは要チェックです。
  3. 必要書類の準備

    • 後述の「必要な提出書類」をそろえます。
    • 自社のDX戦略やビジョンを示す資料なども必要になるため、社内の関係部署と連携を図りましょう。
  4. 電子申請システムからの提出

    • gBizIDプライムでログイン後、必要事項を入力し書類をアップロードして提出します。
    • 提出後、不備があれば差し戻されるケースもあるため、記載内容や提出資料の漏れがないか事前にしっかり確認しましょう。
  5. 審査・認定

    • 提出後、経済産業省が審査を行います。
    • 審査が通れば、晴れてDX認定企業として認定証が交付されます。認定後はDX推進ポータルの「認定事業者一覧」へ掲載されるため、社外へのPRに活用できます。

必要な提出書類

DX認定を申請する際には、以下の書類が基本的に必要とされています。詳細は必ず最新の経済産業省・IPAのガイドラインを確認してください。

  1. 認定申請書

    • 企業の基本情報やDX推進体制に関する概要を記載します。
    • 企業名・所在地・代表者名のほか、DX推進責任者や担当部署などを明記しましょう。
  2. 申請チェックシート

    • 経済産業省が提示しているチェックシートに沿って、自社の状況をセルフチェックする書類です。
    • ガバナンス体制やDX戦略の有無などを具体的に記載します。
  3. 補足資料(必要に応じて)
    • 必要に応じてそれぞれの設問に対する回答の補足説明ができる書類を添付します。

DX認定に向けた準備

経営ビジョンやビジネスモデルの策定

DX認定を受けるには、「単にITツールを導入する」だけでなく、経営ビジョンと一体となったビジネスモデルを策定していることが重要です。たとえば以下のステップを踏むとよいでしょう。

  • 自社の強み・弱みの洗い出し
    現在のビジネス構造や市場環境を分析し、デジタル技術を活用して強みを伸ばし、弱みを補完する方向性を検討します。

  • 将来像の設定
    3年後、5年後のビジネスモデルはどうあるべきか?経営ビジョンを明確化し、具体的な将来像を描きます。

  • ロードマップの作成
    そのビジョンを実現するための具体的なステップやスケジュールを定義し、全社的に共有します。

「DX戦略」を策定

「DX戦略」とは、ビジネスモデルや経営ビジョンを具現化するための具体策をまとめたものです。DX認定申請時には、以下のポイントがしっかりと示されている必要があります。

  • DX導入の目的・効果
    顧客価値の向上や社内業務効率化によるコスト削減など、DXによって得られる具体的な成果を明確化します。

  • プロジェクト体制・役割分担
    どの部署が中心となり、どのように横断的な組織体制を組むのかを示します。

  • DX推進に向けたリソース配分
    人員・予算・時間の配分を具体的に決定し、トップマネジメントのコミットメントを明記します。

「DX戦略」の達成度を測る指標を決定する

DX戦略を実行するうえでは、進捗状況を客観的に測る指標(KPI:重要業績評価指標)が欠かせません。

  • KPI設定の例

    • 新規デジタルサービスの売上高
    • サービス導入企業・ユーザー数
    • 生産性向上率(工数削減率、誤入力削減率など)
    • 顧客満足度(NPSなど)
  • モニタリング体制
    KPIの数値を定期的に評価し、必要に応じてDX戦略を修正できる仕組みを構築します。

経営者による「DX戦略」の推進状況等の対外発信を行う

DX推進を加速させるためには、経営者による社内外への明確なメッセージが欠かせません。

  • プレスリリースやWebサイトでの公表
    経営トップがDX戦略の方向性や重要性をメディアや自社サイトで発信し、利害関係者(ステークホルダー)と共通認識を形成します。

  • ステークホルダーへの定期的な説明
    取締役会や株主総会、取引先向け説明会などでDXの進捗や成果、課題を定期的に報告・共有することで理解と協力を得やすくなります。

「DX 推進指標」等による自己分析を行い課題把握する

経済産業省やIPAが提示している「DX 推進指標」などのフレームワークを用いて、現状を数値化・可視化し、自社がどのレベルにあるのかを自己診断することも重要です。たとえば、以下のような項目があります。

  • デジタル技術の導入状況(業務システム、顧客データ管理など)
  • 人材育成の取り組み(研修や資格取得支援、成果報酬制度など)
  • 経営者のコミットメント度合い
  • 社内のITリテラシー水準

自己分析の結果をもとに、課題やリスクを早期に洗い出し、対策を講じましょう。

サイバーセキュリティ対策を推進する

DXと切り離せないのがサイバーセキュリティ対策です。例えば、IPAが推進する「SECURITY ACTION(二つ星)」は、中小企業でも取り組みやすいセキュリティ対策実践宣言制度であり、以下のような要件を満たすことで「二つ星」を取得できます。

  • 「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の実施
  • 情報セキュリティ基本方針」を策定

DX認定の審査では、情報資産を適切に保護しながらデジタル技術を活用できる体制が整備されているかどうかも見られるため、サイバーセキュリティ対策の強化は必須といえるでしょう。

まとめ(結論・総括)

本記事では、DX認定の概要からメリット、申請手順、そして認定を受けるための具体的な準備について解説しました。以下に重要ポイントを簡潔にまとめます。

  1. DX認定制度の概要

    • 「情報処理の促進に関する法律」に基づいた国の公式認定制度であり、企業が“DX-Ready”であることを示す仕組み。
    • ガバナンスコードの基本的事項に準拠することが認定の条件。
  2. 認定を受けるメリット

    • 企業イメージ向上、投資家・取引先への信頼獲得
    • 税制優遇(3%~5%の税額控除)、特別金利融資、人材育成助成などの経済的メリット
    • DX銘柄やDXセレクションへの応募権を獲得
  3. 申請方法のポイント

    • gBizIDプライムを取得し、電子申請で行う。
    • 認定申請書、申請チェックシート、DX戦略の資料などを整備して提出する。
  4. 認定に向けた準備

    • 経営ビジョン、ビジネスモデルの策定
    • DX戦略の作成とKPI設定
    • 経営者による対外発信
    • DX推進指標の活用と自己分析
    • サイバーセキュリティ対策(SECURITY ACTION二つ星取得など)

DX認定の取得を通じて得られる対外的な信用や税制優遇、資金調達面でのメリットは、今後の企業成長に大きく寄与するでしょう。しかし、DXを成功させるには、トップマネジメントの強いリーダーシップや、社内全体の協力体制が欠かせません。ぜひ本記事を参考に、貴社ならではのDX戦略を策定・推進してみてください。

なお、DXを推進するうえで、業務フローのデジタル化・効率化は避けて通れないテーマです。特に総務部門の業務は多岐にわたり、紙書類や郵便物の処理などアナログな作業が残りがちです。そこでおすすめなのが、総務の業務効率化ツール「atena」 です。

  • 「atena」で実現できるメリット
    • 郵便物の自動デジタル化
    • 書類の電子保管・共有
    • テレワークやリモートオフィスとの高い親和性

こうしたツールを活用すれば、総務部門の業務を抜本的に効率化し、人的リソースをより付加価値の高い業務へ振り向けることができます。DX認定を目指す企業が増える今こそ、「atena」を導入して総務領域のデジタルトランスフォーメーションを進めてみてはいかがでしょうか。DX推進の第一歩として、まずは身近な業務効率化から取り組んでみることをおすすめします。